1) 大気の温室効果と大気中の水蒸気
簡単な放射エネルギー支式を用いると、現在の太陽定数(=1367W/m2=1.96cal/ (cm2・min))の下でも、大気を持たない裸の地球の表面近くの温度は次のように計算される(たとえば小倉、1997)。
裸の地球:-18℃
ー方、地球上に展開されている気象観測所のデータ処理から、大気に包まれた現在の地球の表面近くの年平均温度は下のようになる。
現在の地球:+15℃
両者の比較から分かるように、濃密な大気で包まれた現在の地球は、大気を持たない裸の地球より33℃も高温に維持されている。これは地球大気の温室効果のためである。それゆえ、大気の温室効果は、地表近くの温度環境を生物の生存適域に維持してくれている命の大恩人ということができる。いま、地球温暖化との関係で、大気の温室効果は若干敵視されているが、それは人類の生産活動によって温室効果が、自然生態系と人類社会の適応可能な速度以上で強まるという心配のためである。
よく知られているように地球大気は様々なガスの混合で、全質量は5.3x1018kgになる。その90%は15km以下の対流圏内にあり、それ以上の成層圏内にある大気量は10%である。そして、全大気量の99.9%は50km以下の大気層内にある。大気を構成するガス類は次の二つに大別される。
1] 準定常成分:窒素、酸素、アルゴン、ネオンなど
2] 温室効果成分:水蒸気、二酸化炭素、メタン、オゾンなど
準定常成分は大気の99%近くを占め、その含有率が場所・季節・高さでほとんど変化しない特徴をもっている。一方、温室効果成分は変動成分ともよばれ、地表の状態・人間活動の強弱・季節などによって大きく変化する。