地球環境と水資源・食料生産
宮崎公立大学
学長 内嶋善兵衛
1. はしがき
地球惑星科学の最近の研究結果によると、半径約6,380kmの地球がほぼ現在の大きさになったのは46億年前から1億年以内であったといわれる。そして、約40億年前に原始海洋内に生命体が生まれた。それ以来、生命の糸は途切れることなく続き、いま我々が目にするような多様な生物種の生息する生物圏へと発展・進化してきた。
天変地異による何回かの生物群の集団絶滅があったにもかかわらず、40億年の長きにわたって生命の糸が続いているのは、我々の生存する地球上の環境が次の基本的条件を満たしていることに起因するということができる。
1] 地表近くの温度が生物の生存に適する0〜40℃域に保持されてきた。
2] 地球上に液体の大量の水が存在し、地球環境を有害な太陽紫外線から守り続けてきた。
一方、人類を含めて地球上の全生物は、その生存エネルギー緑色植物の光合成活動によって生成される乾物内に固定された太陽エネルギーに頼っている。
緑色植物群の光合成活動は、入射する太陽エネルギー、温度環境そして水資源に密接に関係している。爆発する世界人口をひかえて、人類の生存エネルギー獲得すなわち食料生産は近未来における最大の難問である。この解決には、土地資源の有限という壁もあるが、淡水資源の獲得とそのより効率的利用という課題がひかえている。
そこで、本小論では地球環境と食料生産の立場から地球の水資源の問題を簡単に論じてみたい。
2. 地球環境と水
最近の評価によると、地球上には13.5〜13.7億km3の水があり、その97%は平均水深3,700mの海洋(面積約361億ha)内に満々とたたえられている。それゆえ、宇宙からみた地球は、他の惑星とちがって青々とした水の惑星に見える。これが地球を生命の星とし、人類という不思議な生物種を育てた大きな原因ということができる。そこで、ここでは水の存在が、生物の生存できる地球環境の形成にどのように関係しているかを簡単に説明する。