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水資源開発が限界に接近して水質が劣化すること、これに衛生的な側面が加わる消毒処理などで飲料水としての質の低下は一般的にも指摘されている。加えて、後述するような水危機時への対応の弾力性が乏しくなることによる時限的ながらも量的確保面の問題も生ずることは見逃がせない。市民の消費生活における生活用水のコスト負担は0.6%と極めて低く、また需要の価格弾力性も低いものであることが、行政サイドからの水資源開発への資金投入の積極性を阻害することがないであろうか。

 

4 水危機への対応

 

水資源が長期的には比較的安定的に推移してきていたが、今世紀に入ってからの人口増加によって人口1人当たり水資源はこの半世紀に40%減少している。今後の人口増予測によれば、この1人当たり水資源の減少はさらに加速し、これに近年の地球環境の変化の影響を考慮すると、現在の水資源使用率が地球レベルで50%という条件を前提としても、地域偏在性を加味すれば、部分的な水危機は不可避である。国連も21世紀中頃には水不足国が現在の31ケ国から80ケ国となり、人口では現在の5億人から28億人へ、また、比率では40%に達することが予測される中で、さきに述べたような危機宣言に発せられているのである。

水危機はどのように状況で発生するのであろうか。量的な面では貯蓄量の減少による渇水、地下水の枯渇であり、これに地震、堆砂などによる貯留施設の機能低下がある。他方、質的な面としては短期的には水質悪化による事故、濁度増加を伴う洪水があり、長期的には富栄養化、地下水汚染などが考えられる。

さらに水供給システムの面では、地震、停電、地面の陥没などによる輸送機能の阻害、処理機能の阻害などが考えられる。こうした危機状況は水管理やインフラへの投資が先行している国でももちろんのこと、途上国のように変化する水需要に対する供給システムの建設に追われる場合には不可避的に頻発することが予想されるのである。近年、中国の黄河下流域で限定された期間とはいえ渇水状態が発生していること、長江の大洪水での甚大な被害などは水資源管理の面からも見逃せないところである。

 

 

 

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