都市化をめぐる、このような状況から考えられることは、都市化が人口の生活、消費の水準の上昇を伴い、水資源に占める都市用水のシェアを引上げる効果をもつのみではないということである。
農業用水、工業用水に対応する生活用水は狭義の家庭用水(飲料、調理、洗濯など)のほか都市活動用水がある。飲食店、ホテルなどの営業用水、公衆トイレなどの公共用水、消火用水などが含まれる。この都市活動用水は都市のインフラ的性格をもつものであり都市化が進展する場合は必要な投資であって、近年の途上国の都市化に伴う生活用水の需要増加にはこのような側面があることは軽視できない。
都市インフラの整備が工業化と都市化の相乗効果を高め、水需要増が生活用水と工業用水を含む都市用水の確保の資源開発を促進し、都市近郊の農業地域に影響し、極端な場合、農地の減少に及んでいることが東南アジアなどでもみられるようになってきていることは注目されなければならないであろう。
都市化と水需要の関係で忘れてならないのは、都市の規模の問題である。都市の発達には生産、流通、交通など地域特性も含めた多様な要因が働き、適正規模という点からも、都市の規模の格差も発生する。しかし、近年の産業化、都市化の相乗効果による巨大化の傾向は顕著である。こうした都市の巨大化による水供給の確保は水資源に関する依存性にも変化を生じさせ、一般的には自然流量依存から、水資源開発型へと移行する。ダム建設を含めた水源確保は勢い計画性を強めるところとなり、水量の確保に関しては分散する中小都市よりも優位に立つとも考えられる。こうした条件から都市化が水資源の面から阻止されることは現状からは考えにくい。
しかしながら、都市化が進み、大規模化すればする程、都市の人口は水に関して、より有利な条件に恵まれるようになるかといえば必ずしもそうではない。参考別表に示すように、市民の生活用水に対する満足度は、概して、大都市になる程低下している。東京都の場合、満足が64.6%と高いとはいえ、町村の92.5%を大きく下回る一方、不満は30%で町村の6.9%の4倍強と多くなる。満足・不満足の内容は多岐にわたるが、水質にかかわるところが大であることは見逃がせないといえよう。