以上のような多少どちらかに偏した議論であるが、どちらがより正しいかは明らかにすることはできない。かつて、ボンガーツ(John Bongaarts)はあまり楽観すぎることも悲観すぎる見解はとるべきではなく、適度に楽観ないし悲観が望ましいと言った。しかし、21世紀の展望はますます不透明さを深くしている。
残された50年
前途に対する不透明さの要素はふえる一方だが、一寸先が見えなくなったわけではない。それは人口の分野における明るい展望である。1992年の推計では2050年の世界人口は100億であったが、6年後1998年推計では89億と下方修正が国連によって行われた。11億の下方修正は人類の前途にとってプラスの指標である。下方修正の重要な要因である出生力の低下は、従属人口指数の著しい低下を21世紀の前半にもたらすことになり、危機の重圧を緩和し、望ましい対策の促進を可能にすることになる。
しかし、反面において過去における高出生率は若い人口の激増―それは雇用拡大に成功すれば成長の活力となり、雇用機会の造成に失敗すれば社会不安をひきおこす―、と人口の高齢化をもたらすことを忘れてはならない。世界人口に占める65歳以上人口の割合は2000年には7%、2050年には15.1%(日本の現在の水準)に達することが推計されている。さらに、人口増加率の低下は予想されてはいるが、21世紀前半の半世紀はなお膨大な人口増加が毎年追加されることは、特に重要な考慮を要する点である。
世界人口はまもなく60億に達しようとしている。アジアの人口も37億に接近しようとしており、60%以上を占めている。その中で注目を要するのは中国とインドの2巨大人口国である。中国人口は2000年には12億7600万、インド人口は10億680万と推計されているが、両者で22億8000万の巨大人口である。この2ヶ国の人口はヨーロッパ人口の3倍を超えている。アジア人口の62%をしめている。いいかえれば、アジア人口は世界人口の61%、中国、インド人口はアジア人口の62%をしめている。