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総括:21世紀の鍵を握るアジア

 

日本大学人口研究所

名誉所長 黒田俊夫

 

「成長の限界」1)を「超えた」2)人類

人類が未憎有の増加を引きおこした1960年代を背景にしたローマ・クラブの「成長の限界」(1972)は人口の増加と経済成長の持続がもたらす人類の終末の警告を発した。人口の増加にもかかわらず、科学技術の進歩による食糧生産能力の著しい増大、豊かな生活水準の達成に安住していた世界は“まさか”、“大げさすぎる”と反応した。

しかし、「成長の限界」は人口の爆発的増加に対する深刻な関心を高める重要な1つの契機となった。人口増加抑制論は国連を中心とする耐えまざる努力によって、紆余曲折を経ながらも成果をあげつつある。

人口増加を決定する出生力の低減は著しく、すでに人口再生産の度合いをあらわす合計特殊率でみると、置換水準以下にまで低下している国は現在51ケ国(その人口は世界の44%)に達し、また2015年には88ケ国に達し、その人口は世界人口の3分の2に達するとも推計されている。ここで注目すべき点は、いわゆる先進諸国ではほとんどすべて、子供は2人以下の置換水準となり、さらに途上国においても韓国、中国、シンガポール、タイ等においてこの低水準の出生力に到達していることである。したがって、人口増加抑制がさらに強化されれば、ローマクラブが1972年に警告した人口増加の問題の解決に成功しつつあるといってもよいであろう。

「成長の限界」から20年後の1992年の「限界を超えて」は、成長の限界を超える段階に達してはいるが、解決の可能性を示すいくつかの新しい発展もみられることを指摘している。「人間が必要不可欠な資源を消費し、汚染物質を産出する速度は、多くの場合すでに物理的に持続可能な速度を超えてしまった」3)しかし、いま、直ちにこのような行動を深く反省し、大幅に改善しようとする人間の知性、創造力が残されている、と期待感を示している。

 

 

 

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