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それ以来電話はかかって来なくなりましたが、多少なり、そういう目で見ているのは確かです。

美奈ももう二十二歳になりました。今では独立して立派に生活しています。時々は家に来ていっしょに食事をします。そんな折り「お父さんお母さんには随分迷惑をかけたね。でも、今は、両親が教えてくれた事を忠実に守り頑張っているから心配しないで」とまで言ってくれるようになりました。

この世の中で私達夫婦の事を、「お父さん、お母さん」と呼んでくれるのは美奈の他誰もいません。それだけに十六年余りの苦労も、今では良い思い出しか残っていません。私達の心からの願いは、早く良い人に見染められて結婚してくれることです。

また、六年位前から季節里親事業として、私の家にも当時小学四年だった男の子が来ました。その子の名前は洋二君と言い、とても静かな子です。その子も今年で高校一年になりました。でも、後二年で高校を卒業する時には施設から出なくてはなりません。そこで、今年のお正月に来た時話しておいたのですが、「施設を出て社会人になっても、いつでもこの家に帰って来ればいいよ。」と。洋二君は、とても嬉しそうに「うん」と返事をしていました。

実際、この子達が施設を出たら、寮に入るか、住み込みで働くかのどちらかです。私達は命のある限りいつまでもこの子達を見守って行こうと思っています。

 

 

 

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