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ないで元気に学校に通う事でしょう。この前まで手をひかれて保育園に通っていたのに早いものです。うちの家族となってまだ五年足らずなのに、もう十年以上も一緒にいるような気がします。多分それは生まれる前から、お父さんとお母さんと赤い糸で結ばれていたからに違いありません。初めは照れくささもあったのか、お母さんの足をポンポンたたいて片言を言っていたのに、いつの間にか「お母さん」と言ってくれたね。

「お風呂に入るよ」と言うと「お風呂?」と言っていつもいつもメソメソ泣いて…。なぜ泣くんだろうと思っていたら、男の人と入った事がないからとてもこわいと言うことがわかって、お父さんといっしょにお風呂に入るのに二カ月もかかったんだよ。

お母さんが頼みの綱で、台所にいてもトイレにいても、どこへ行くのにも少しでも顔が見えないと泣いて泣いでどんなにか心細かったんだと思う。今だからこそ、あの時、あんな方法もあったのに、こうすればよかったのに、と思う事ばかりだけど、その時はお母さんも必死で目先の事のみにとらわれ、考えを広げるゆとりが全くなく、出口の見当たらない迷路に入ったようだったのかも知れない。そんなお母さんの心を

 

 

 

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