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備状況が同程度の市区町村でも、施設介護と在宅介護のどちらに力を入れるか、それらに対する住民の「利用意向」をどう"勘案"するかによって「給付費用見込みの総額」が変わり、それに伴って介護保険料の金額が高くもなれば低くもなる。また要介護度の判定を甘くするか辛くするかのさじ加減によっても左右される。つまり保険料はそれぞれの市町村長の介護に対する取り組む姿勢によって高くも安くもなるのだ。

 

 

こうして算定された介護保険料は地方議会の議決を経て条例で決めることになっている。ところが、算定の単価となる肝心の介護報酬は平成十二年度国家予算の編成時にならないと正式にはわからない。そこで介護保険を利用する住民としてわきまえておきたい点は一つ。自分の住む市区町村の介護サービスを充実してほしいと望むなら、そのぶん保険料が高くなることを覚悟しなければならないということだ。

保険料を多く支払って質量ともに充実した介護サービスを受けるか、それとも、そこそこのサービスでいいから保険料の負担を少なくするか-その辺を自分たちが選んだ市区町村長はどう考えているのか。それを見極めて、首長選挙に投票することが自分自身が支払う介護保険料を決めることになる。介護保険に真面目に取り組む市区町村長の全国ネットワーク「福祉自治体ユニット」の菅原弘子事務局長は「ここがいちばん大切な点です」と指摘する。

武蔵野市役所の介護保険準備室が市民に介護保険の仕組みや保険料について説明すると、「市役所はいつから保険の勧誘をするようになったのか」とか「年金暮らしの年寄りから保険料を天引きするなんてけしからん!」といったお叱りを受けるそうだ。そんな誤解や不満はわからないではないが、保険料は市民自身が決めるという介護保険の"生命線"について国も都道府県も市町村もPRに力を入れるべきだろう。とりわけ介護保険の運営当事者になる市区町村は「情報をできるだけ公開し、住民の方々に十分議論していただけるようにしなければならない」(谷澤高知県介護保険推進課長)はずだ。

安いも高いも保険料を決めるのは実は住民自身なのである。

 

 

 

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