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ールで、寿美子さんはピーコさんとトーク共演を実現させた。それまで何のつながりもないピーコさんだったが、寿美子さんが直接、電話をかけ、ピーコさんがその申し出を快諾してくれた。

二人のジョイントコンサートは、これを皮切りに平成九年まで毎年一回、計五回開催された。また他の一流のタレントさんとのジョイントコンサートの企画も持ち込まれるようになり、漫才の今いくよ・くるよさん、腹話術の川上のぼるさん、参議院議員の萱野茂さん、狂言師の茂山千之丞さんらと共演した。この一月には落語の桂米朝さんともショーを開くなど、ますます交流の幅が広がっている。

一方で、乳がんの手術後、右腕が痛むため長い曲は負担になり、障害のこと、自分の病気のことを人に話したり、老人ホームでボランティアをするようになるなど演奏の形が変わってきた。

「点字を書くのがいやになったり、朝起きるのもしんどくなってきたり。それに、一緒に手術した友達がどんどん減ってきているんです。そんな中で毎日の生活で何に一番重点を置けばいいのか。主人が、世の中の役に立つのは障害や病気のことを話すぐらいかなって言うんですよ。それで、自分のことを話すようになったんです」

ボランティアで行った老人ホームの演奏会がきっかけで、清水寺で参詣している人たちに向かって琴を弾くようになったり、学校に琴を持参して話に行くようにもなったという。今の彼女の生きがいの一つである。

 

 

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ピーコさんの毒舌にもしっかり応酬(平成9年4月。草月ホールにて)

 

 

理解者に理解してもらうだけではだめ。みなに知ってほしい

「昔は大きな演奏会をやってみたいと思ったこともあったけど、今はいろんな人と話したいです」。「いろんな人」とは各分野で活躍中の有名な人という意味なのだが、梶さんが「有名人」にこだわるのには訳がある。

 

 

 

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