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指定事業を目指すNPOの課題

介護保険制度が二〇〇〇年四月から始まり、また、特定非営利活動法人(NPO法人)格を取得する団体もこれから増えていくことでしょう。特に、福祉系NPOにとっては、「指定居宅サービ事業者」やケアプランを作成する「指定介護支援事業者」として介護保険制度に参入していく市民互助型団体も多くなっていくものと思われます。

介護保険とNPO法は、これまでの行政サービス(公共財)、市場から買うサービス(市場財)だけではなく、市民が「心」を根底として自らサービスを編み出していく、市民自治の形成という、今までにはなかった新しい価値観による仕組みづくりを課題とするものです。この三つが機能したときにはじめて豊かな地域社会が形成されることになりますから、世の中の仕組みを再構築する一環として生まれた制度ともいえましょう。

二つの法案が成立した直後には、「ふれあいボランティア活動」も、「ふれあい切符制度」ももう必要ない、といった声が聞かれました。もちろん、そうした声は今ではありません。介護保険制度はご存じのように、主に身体介護を中心に手当てされるものですが、人間は、排泄や入浴介助だけでは精神的満足は得られませんから、話し相手や散歩の介助などを通じた心の支援が必要です。こうした分野を担うのは家族やボランティアであり、ボランティアが担う分野には「ふれあい切符制度」が馴染みやすいものだからです。

ところで、介護保険制度が導入され、福祉系NPOがこの分野に参入していく場合には「ふれあい切符制度」も、これまでのようなあいまいな形のままではだめな場合が出てきます。その団体がプロ化していく場合には、労働契約には「ふれあい切符」はまったく通用しませんから、整理が必要となります。また、NPOが指定事業者となり、労働契約として働く場合も同じことです。ただし、NPOは、非営利・公益活動という本来目的を社会に問うていくことがその前提ですから、ふれあいボランティア活動の分野については、

 

 

 

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