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「ふれあい切符制度」の誕生と背景

わが国には、古来から「結い」や「講」、あるいは「隣組」といった助け合いの制度がありましたが、戦争や高度経済成長期を経て、こうした助け合いの仕組みはいつの間にか薄れてしまいました。しかし、経済市場主義、学歴偏重主義の中で、人々はようやく、物の豊かさや学歴だけでは心豊かに暮らしてはいけない、ということに気付き始めていきます。「ふれあい切符」の登場は、こうした時代背景と大きく関連しています。

わが国の「ふれあい切符」には二つの源流があるのですが、その一つが昭和四八年に大阪に誕生した「ボランティア労力銀行」(初代代表・故水島照子さん、現代表・森脇宜子さん)です。水島さんは、「労力にインフレはない。労働力を新しい愛の通貨にしよう。労力銀行の利息は友情」を合言葉に団体をスタートさせました。それぞれのライフスタイルの中で、労力や時間の余裕のある時、余裕のない時を活用して「労力」を交換しようというのです。これが、無償による「ふれあい切符」の源流です。

もう一つは、有償による「ふれあい切符制度」で、昭和五六年に東京都練馬区の「暮らしのお手伝い協会」(代表・故服部正見さん、平成八年に閉会)から始まりました。昭和四〇年代後半からぼつぼつスタートした市民による助け合いの有償ボランティアは、家事援助や介助、簡単な介護などの在宅サービスを継続して受けたいという利用者がその感謝の気持ちを謝礼という形で表したいとして生まれたものです。というのは、家族や親戚でもない人々から全く無償で継続してサービスを受けるのには、心理的抵抗が強すぎてお願いしにくいからです。利用される方とサービスを提供する側とが対等の関係に立てるのが、有償サービスです。

ところが、一方の「助け合い」の一環としてサービスを提供したいという善意の人々は、お金が欲しくて「助け合い」をするわけではありません。ここに、「ふれあい切符制度」というシステムが編み出されたという背景があります。

 

 

 

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