「じゃ、どうするんで?」
「行くのがむずかしけりゃ、来てもらうしかないだろうよ。てぇことは、一人、二人とパラパラ住んでる方によくお話しして、一緒に住んでもらうのよ。過疎地に近い町には、住む人がなくなって放ったらかされている立派な家が何軒もある。そんなことなら、首長さんが仲介して、気の合う何人かで一緒に住んでもらうのさ」
「それって、財団の神谷さんが一生懸命宣伝している、ふれあい型グループホームってやつじゃござんせんか」
「それだよ、八つぁん。そして、墓も一緒に集めてしまえばよかろうじゃないか。どうせ、本人が亡くなりゃ放ったらかしになるんだから、生きてるうちに役場のあっせんで住み家も墓もまとめた方が、本人にとってもずっと安心だろうよ。そして、介護をする側も何人がまとまっててくれればできねぇことがやれるようになる」
「しかし、これまでの生き方をがらっと変えるなんてことが、実際にできますかねえ」
「病院や施設に入るよりずっといいんだから、首長さんがその気になればやれるさ。誰だって、不安を抱えて一人生きるよりは、ワイワイガヤガヤやって生きる方が楽しいんだから」
「それもそうだ、中にご隠居さんのような理屈っぽいのがいなけりゃね」
「知恵を出せと言っといて、理屈っぽいとは、何だい」
「それそれ、そういってすぐムキになるところがグループホームに合わねぇとこでさ。今年は性格を直しなせぇ。アバヨ」
「おや、もういねぇ。まったく、すき間風みてぇな野郎だ」