「そりゃそうだ。首長さん方の中には、とんと住民の介護問題に無関心で、さっぱり準備が進んでねえところがあるが、そういう首長さんらには歯を食いしばってがんばってもらわなきゃなんねえ。その一方で、過疎地のようなところじゃ、いくら首長さんが早くからがんばっていてもどうしようもないってところがあるに違えねぇ」
「おや、ご隠居さん、東京しか知らねぇかと思えば、けっこう物知りじゃござんせんか」
「それぐらい知らいでどうする。だいたい過疎地については、介護保険の問題だけじゃねえ、ありとあらゆる行政サービスをどうするかって問題があるのに、これまでどの省庁も知らぬ顔してやってきた。必死でやってきたのは郵便局くらいだ。それを、ここへきて、介護保険のサービスをどうするかって騒ぎ立てても、急にいい知恵が出るわけがあるめぇ」
「おっと、と、と。そいつは冷てぇ、ご隠居さん。人でなしと言われたくなきゃ、いますぐ知恵を出しなせえ」
「それはやっぱり、過疎地を抱える首長さんたちが集って、知恵を集めるのが第一だろうよ。そのために福祉自治体ユニットもあることだし」
「だめだよ、ご隠居さん、あんたも知恵を出さなきゃ、責任が果たせねぇ」
「過疎地で在宅への介護サービスがむずかしいのは、家がパラパラと離れていて、訪問するのに時間がかかるからだろうよ。とすると、あくまで訪問してサービスする形でやるなら、その移動費を特別に払ってあげるしかねえ」
「税金から?」
「そう。過疎地でのサービスには金がかかる。これは、郵便のサービスだって警察や消防のサービスだって、みんな同じだ」
「しかし、この不景気の時代、それで持ちますかね」
「持たないかもしれないね」