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たとえば在宅福祉活動を行うD団体の場合、自治体の担当者から、強硬に「定款の目的」の中に、「地域を限定すること」「対象者を明記すること」という指導を受けているという。これは、NPO法からいけば明らかな間違いである。その基本は、「不特定かつ多数のものの利益」であって、受益者や地域を限定することのほうが、不当な指導に当たるのである。

また、今回の申請に当たって、経済企画庁では一つの例として、「総理府令」における定款を示しているが、ある県での説明会では「うちの県はほとんど経済企画庁と同じである。従って、定款は、同じ形にしてもらわないと通すことはできない」との説明があったという。また、相談時には、申請団体に対し、定款の中に"入会金、年会費などの金額を記載するように"とか、従来からサービスの双方向性をうたい、サービスが必要な人とサービスを提供する人とを「正会員」と表現している団体に対して、「これまでの正会員を別表現とし、民法上の社員を正会員としなければ認められない」といった、団体運営にまで踏み込んだ細かな?点までをも「指導」するところも事実ある。

だが、定款といえば、その団体の市民自治における憲法も同然。活動の使命や目的を、あるいはその使命や目的を具体化するための事業を社会に明言するものであって、所轄庁が「指導」という名のもとに、不用意に変更させるべきものではない。そもそもNPO法人格の取得は法律で定められた認証であるわけだから、NPO担当者には法律で市民の判断に委ねられた事項を、勝手に一つのものに決める権限はないはずだ。それを経済企画庁や都道府県が示す一つのひな型に穴埋めさせるような「指導」であってよいのだろうか。それでは、NPO法における自由で自律的な市民活動を支援するという精神からも、これまた外れていると言わざるを得ない。

その一方で、「認証」をなんとか早急に受けようとするために、自身の団体のありようを変節する市民団体も残念ながら出てきている。法人格を早急に必要としている団体にとってはやむにやまれぬ選択ともいえるが、困ったことには、何の不思議も感じることなく、「行政指導」に追随してしまう団体も、恐らく相当数あると思われることだ。

NPO法の精神からすれば、これまでの公から提

 

 

 

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