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を受けたり、苦情を聞いたりして、施設のサービスの質を維持、向上しようという試みだ。参加施設は昨年二つ増え、現在は八法人十四施設がオンブズマンを受け入れている。設立当初のオンブズマンは弁護士、主婦、大学教授ら六人だったが、やはり昨年から三人増員して九人になった。新たなメンバーには司法書士と医療ソーシャルワーカーも加わっている。また各施設の協力員も九七年末から会を作って勉強している。

オンブズマンの主な仕事は福祉の利用者からの個別相談や苦情を受けることのほか、利用者の家族会や当事者の会、施設の職員会議への参加や施設職員の研修などである。発足後一年半たった成果はどんなものだろうか。Sネット代表者の上田晴男氏(福祉総合援助施設「空と海」施設長)に聞いてみた。

「日常的な相談が多く、人権侵害のような深刻な案件はまだない。また、モノを言いたくても言えない人もオンブズマンになら言える人がいる。利用者は職員らに直接訴えることはしないが、オンブズマンを通して間接的になら発言できるのです。また施設の入居者は要望しても叶えられないことがあったとしても、なぜできないのかという事情を知りたがっている。疑問に対して説明することの大切さが改めてわかりました」

 

 

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「湘南ふくしネットワーク」代表の上田晴男さん。

 

 

市民社会に必要なオンブズマン制度。"閉ざされた社会"は開けるか?

オンブズマンとはスウェーデン語で「代理人・弁護人」のこと。三権分立の欠陥を補う苦情処理制度として誕生した第三者機関だ。もともと行政監察の仕組みとしてスタートした制度だが、その福祉版が日本に初めて登場したのは東京の中野区。一九九〇年のことである。その後、世田谷区と三鷹市にも生まれ、横浜市でも始まった。Sネットは行政主導ではなく施設自体がセルフチェックのために作った施設オンブズマンである。単独施設による試みは一九

 

 

 

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