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ある。そして顔写真の上にはお年寄りが読みやすいよう、大きな文字で次のように書いてある。

「オンブズマン(代理者)は、その人らしく生きるために欠かせない「権利」を守り、利用者の考え、訴えたことに対し相談に乗り、秘密を守って実現するための活動をしています」

オンブズマンの顔写真の下にはオンブズマン直通の携帯電話のナンバーが明記され、ホームの入居者がいつでもオンブズマンと話ができるようになっている。このほか毎月一回、このホームを担当するオンブズマンが、ここにやって来て入居者の相談相手になったり、苦情を聞いたりする。それは、こんな具合だ。カトレアホームにはオンブズマンと入居者との橋渡しをするオンブズマン協力員がいる。生活相談員である。オンブズマンと日程を調整して訪問日を決めると、ホーム内の各部屋を回って、オンブズマンの趣旨と来訪日を入居者全員に知らせる。当日はオンブズマンと会いたい入居者が応接間で会い、相談したり苦情を漏らしたりする。一人当たりの相談時間は二、三〇分くらい。協力員や施設長ら施設側の人間は誰も立ち会わない。ここで出た要望や苦情はオンブズマンからの「提案」という形でホームに知らされ、ホームはそれに答えるという仕組みである。

例えば「トイレが使いにくい」という苦情に対しては手すりなどを完備したバリアフリーのトイレに作り直した。緑の公衆電話を設置したのもオンブズマンを通じて実現した。「おむつが濡れたらすぐに交換してほしい」という提案があった。これを受けてホームはおむつ問題検討委員会を作った。おむつ交換が随時できるようにするためには職員の数を増やさなければ解決しない。これはどこのホームでも労務問題に直結するため解決はむずかしい。こうした提案には「お金がない、人手がないからすぐには改善できないという施設の実態をさらけ出すことも大事」(高橋健一施設長)だという。

さて、カトレアホームが受け入れているオンブズマンは「湘南ふくしネットワーク」(略称Sネット)に所属する人々である。Sネットの設立は一九九七年五月。茅ヶ崎、藤沢、鎌倉など神奈川県の湘南地区にある特別養護老人ホームや障害者施設などを運営する六法人が集まって作った。共同で選んだオンブズマンがネット参加施設を定期的に訪問し、入居者の相談

 

 

 

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