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お年寄りってわがまま。でもそれが普通なんですよね

開所して一年半余り。家族も巻き込んでの民間デイは、日々戦場。

「プライバシーもへったくれもあったもんじゃないし、周りに振り回されながら生きとるよ」と笑う阪井さんだが、その表情は明るい。それは、施設にいた時と違って、「自分がやりたいと思ったことができる」ということが、大きなやりがいとなっているからだ。「ここを始めて気付いたのは、お年寄りはわがままなんだということ。施設にいる時は、何か食べたいものはない?どっか行きたいところはない?と聞いても、"な〜んもない"って言うばかり。でもここのお年寄りは、暑ければアイスクリームが食べたいと言うし、やれ、風呂がぬるいだ、外に遊びに行きたいだと、わがまま一杯だよ。でも、それが普通。ここでは言ってはいけないこと、やってはいけないことは何にもない。スタッフとも本気でケンカもしちゃうくらいだから(笑)」

ケンカができる、言いたいことが言えるというのは、対等な関係が築けている証拠であり、それぞれの信頼関係がきちんとできていることの裏返しでもあろう。まさに家族のように。

「まあ、金銭的には大変だけど、一生懸命やってたら行政も振り向いてくれたし(補助金年間一八○万円の交付)、いろんな人が助けてくれたりで、何とかなるもの。ケ・セラ・セラの精神ですね。とにかく、『にぎやか』を地域の人から、こういう場所があってよかったと思ってもらえるようにがんばっていきたいですね。近所のおばあちゃんたちみたいに、"遊びに行ってもタダだよ"でもいいから(笑)」

この春には手狭になった自宅から次の家へ移るめどもつき、『にぎやか』はますますパワーアップする予定。阪井さんのような若い力が、きっと、福祉の現場を変えていくに違いない。

 

 

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天気がいい日は散歩に出かけることも。「誰かがどこかに行きたいといったら、必ずそれに応えてあげたい。たった一人のためでも」

 

 

 

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