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えることができなくなっていった。とりわけ、大好きだったおばあちゃんが老人保健施設と老人病院の間をたらい回しにされて、失意の中で亡くなっていった姿は、阪井さんに大きなショックを与えた。

「自分が大事にしてあげたいと思った人がいたら、とことんその人のために尽くしてあげたいと思っても、施設の中ではそれもできない。一〇〇人いたら、目の前の一人のお年寄りも幸せにできんのが現実だったんです」

そうした日々が続く中で阪井さんが行きついた答えは、施設がない社会のほうがかえってお年寄りにとっては幸せなのではないかということ。そして在宅の生活を支えるために自分のできる範囲のことをやろうと、民間デイを開くことを決心したのであった。

「幸い、働き続けた母が建てた大きな家があったから、自分の家を使える。ちょうど長男を抱えて独身(シングル)に戻ったことも重なって、子供もいろんな人に囲まれて育ったほうが幸せだろうとの思いもありました」

 

利用者のニーズに合わせて何でもするのがモットー

それからの阪井さんの行動は速かった。仕事を続けながら、食事、入浴サービスのための食堂営業と浴場営業の許可証を取得。家の改造には、段差解消や手すり付けなどで一三〇万円ほどかかったが、チラシで募った大勢の賛助会員に助けられ、その費用をまかなうことができた。

 

階下の広い今がケアルーム。テレビを見る人、机を囲で談笑する人、ゲームを楽しむ人・・・。そこは家庭そのもののくつろげる雰囲気だった。

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脳性まひの障害がある通称「かっちゃん」は、森高千里のファンというミーハー!?誕生日会でチュッをされて、上機嫌でした。

 

 

 

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