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利用者の選択制の点では良いことだと思います。しかし、私たちのような任意団体の中には、依頼情報が激減したケースがいくつもあり、このことと無関係とは言い切れない状況です。もちろん、委託契約をしているわけではありませんが、結果として影響は大きく、たちまち運営費が行き詰まってきています。他にも毎年8000食の配食を創出してきた市民団体が急に委託をキャンセルされ、福祉法人にそっくり移管というケースもあります。設備は空き、家賃は到底捻出できず、彼女たちは困り切っています。配食サービスのこうした法人移管は全国的な動きとも聞いています。

横浜市では昨年、市民活動推進検討委員会を発足させ、市民活動とのパートナーシップがうたわれています。本当にそうした視点を持つのだとしたら、こうした"法人優先"とも思える現状を私たちはどう理解したらよいのでしょうか。介護保険制度では、"インフォーマルな資源もケアプランの視野に入れるべき"と強調されています。市民活動と行政の「連携」「協働」が「絵に描いた餅」にならないように願いたいものです。

 

横浜市福祉局長寿社会課に問い合わせた。同市では介護保険をにらみ98年10月26日から委託事業者を増やし(いずれも法人)、利用者に事業者を選択してもらうようになったという。それ以前は福祉サービス協会のみに委託していたため、ヘルパーが足りず、その不足を補う意味で市民団体に依頼していたようだ。しかし問い合わせには「現在まで市民団体への依頼が少なくなったという報告は受けていない」とそっけない返事。電話取材の段階でいろいろと背景を説明してくれたが、そのコメントを掲載したい旨伝えると、対応ががらりと変わって、"我関せず"のようなコメントとなった。地元区役所に電話をしたところ、確かに利用者から依頼を受けて派遣までの日数は短縮したので、その結果、市民団体に依頼する頻度は少なくなったかもしれないと、こちらは素直な現場の声を聞くことができた。また、利用者に市民団体を紹介する担当窓口の横浜市福祉局企画課では、「横浜市では行政サービスと市民団体サービスは並列の関係として利用者に紹介している」「市の方で、行政サービスの方を優先させているつもりはないのですが…」との回答だった。

自治体の福祉環境整備が進む一方で、それまで地域で支えていた草の根団体の存在が軽視されるような傾向は確かにある。自治体はこれまでの活動内容や地域への貢献度をしっかり視野に入れて、市民との新たな連携を考えていくべきだろう。

 

 

 

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