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石川 地縁血縁を中心にした相互扶助の考え方は確かに今の中国にはまだ強くありますが、だんだん弱まる方向に行くのでしょう。

堀田 その時々の政治、経済体制は揺れ動くことはありますが、間違いなくどの国も、程度の差こそあれ高齢化に進んでいきます。働いて子孫を残して死ぬという他の動物のパターンから、子孫を残せない世代になっても個として生き続けるという社会。今私は生物界でも初めての大実験だと思っているんです。どの国民も経済的な豊かさを求めるのは自然の行動です。確かにそれは大きな社会改革の原動力になるでしょうが、でもその時に一緒に心の豊かさも合わせて考えていかないと、人としての生きる価値がなくなってしまいますね。

 

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石川 福沢(諭吉)先生の言葉にこんな語があります。『たわむれ去り、たわむれ来る。自ずから真あり』。大きな宇宙から見れば、人間なんてまさにうじ虫みたいに小さなもので、人生たわむれ去り、たわむれ来るようなもので大したことではないけれども、ただ、一生懸命、たゆまずにそれをやってきた。そこに人間を他と区別させる人間としての誇りがある、というようなことです。今おっしゃったとおり、まさに人間が生きる価値というのは、どれだけの業績を世に残したかということじゃなくて、むしろどれだけ一生懸命やってきたかなんですね。そこに人としての真の価値があると。そうした思いが通じる社会であってほしいと思っています。

 

対談を終えて 堀田 力

どんな政治、経済体制であれ人を大切に、自分を大切にという思いは万国共通のはずである。国際高齢者年を迎えて、世界各国でいろいろな取り組みが行われているが、日本からも積極的に情報発信し、成熟した心豊かな高齢社会を築いていきたい。

 

 

 

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