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堀田 (うなずきながら)まさに同感です。

石川 まず自らやる心を持つ。それが徐々にむずかしくなってきたら、足りない分は社会が十分に手を差し伸べてできる限り生きていただくことは大切です。でもあくまで基本は自分で、そうじゃないと自分の生命を燃焼させたことにならないと思うんですよ。

堀田 自分を生かし切ろうという心がなければ、とても寂しい人生で終わってしまいますね。それが高齢者年のテーマの基本的な姿勢だと思うんです。名古屋の施設で暮らされている九〇歳過ぎの女性がおられて、ほとんど寝たきりで動けない方なんですが、パソコンで短歌を全国に発信しておられるんですよ。

石川 ほお、すばらしいですねえ。

堀田 仲間がまたそれに応じて送ってくる。また彼女が添削などをして送り返す。そんなネットワークを持っているんです。目の力が違うんですよ。自分の命を大切にして生きるというのはこういうことなんだと思いました。

石川 本当にそうですね。

堀田 社会が貧しい時代には、働く目的は生産手段を稼ぐ、レイバーという考え方ですが、社会が発達してくると自分を生かす、ワークという思考が生まれてきます。働くこと自体が幸せで、そこから生み出したものが他を支えることにもなる喜びですね。日本でも最近は自分を生かすために仕事がしたい、そんな思いを持つ人が増えてきました。

石川 そうですね。そのためにも職場は従来の画一的なシステムから脱却して新しい仕組みを取り入れていかないといけない。教育制度も同じですが、これからは年齢に関係なく意欲と能力のある人にはいろんなチャンスが提供できるような体制にしないと収まりきらないでしょう。

堀田 たとえば企業だったら新人職員を訓練するオン・ザ・ジ

 

 

 

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