それらがなくても精神的自立を目指すべきであるが、身体の自由のきく範囲が大きいほど自分の意思に従って行動するのが容易だし、経済的に他者に依存していれば、それだけ意思を束縛されやすいであろう。
身体の自立
身体の自立を補助するのが医療や保健、福祉である。家族やボランティアによる援助活動もあるが、こと身体に関しては、医療や保健、そして介護に関する社会的仕組みがどれだけできているかが、尊厳のある生き方を保証するための基本であろう。
日本の医療制度のレベルは高いし、公的介護保険制度が発足することによって高齢者福祉もそこそこのレベルに達するであろうが、高齢者の尊厳保持という観点から、まだまだ問題は多い。
われわれは、行政や立法府および民間組織に向かって、声を上げ、働きかけていきたい。
たとえば、医療については、
● 本人についての情報をすべて教え、説明して本人の自己決定を求め、人倫に反しない限りこれを尊重すること。
● 高齢者医療専門医を小児科医に負けず劣らず養成し、在宅医療体制を整備して、高齢者がたやすく診療や相談を求められるようにすること。