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dent questionnaire)などが義務付けられている。たとえばロンドン近郊のマートン・サットン・アンド・ワンスワース(Merton Sutton and Wandsworth)地区における監査報告書は、六〇頁から成るきわめて詳細なものだ。居住者アンケートも五六項目・一八頁にわたるもので、中には「食事は好きな時間に取れるか」「食事は選択できるか」「朝は起こされず自然に目覚めるか」など、日本の施設の現状からみると、うらやましくさえ感じられる質問項目も含まれている。

イギリスにこのように厳しい品質管理体制が敷かれているのは、民間企業というものはとかく利益を追求するあまり、品質を下げる恐れがあるからだ。実際、かつてはイギリスでも、営利老人ホームでの劣悪な処遇が社会問題化したことがある。

一方、日本の品質管理体制は、民間サービスだけを対象とした一業種数ページの「厚生省通知」(いわゆるガイドライン)や、行政指導などが中心となっている。

全施設を対象とした定期的な監査や満足度調査などは、全国一律のルールとしては確立されていない。

 

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イギリス・ナーシングホーム外観。イギリスでは老人ホーム全体の六割近くが民間企業による経営だ。

 

こうした状況のまま公的介護保険が導入され、民間企業が一気に参入してくれば、中には質の低い事業者が現れるなど、さまざまな問題も起こるだろう。その意味では、今後はわが国でも、イギリス並みの品質管理制度を整備することが必要になってくる。たとえばサービスの品質評価・監視体制や、トラブルが起きたときの事後対応や救済制度などを充実させていくことが重要だろう。

 

 

 

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