引き上げられた利用者負担
意外に思われるかもしれないが、イギリスにおける介護費用の個人負担はかなり高い。たとえば老人ホームの入居料は、所得や資産も充分ある健康な高齢者の場合、月額一〇〇〇〜二〇〇〇ポンド(約二〇万〜四〇万円)である。この額が払えない場合は、一万六〇〇〇ポンド(約三二〇万円)以上の資産の保有者は、その処分を求められる。その資産もなくなれば、週約一〇ポンドの「小遣い」を除き、年金から入居料が自動的に「天引き」される。
かつて無料がほとんどだった医療サービスに「個人負担」という概念が導入されつつあるのと同様、公的な福祉サービスについても利用者負担額が引き上げられる傾向にある。そのうえ最近ではニード判定審査も厳しさを増しており、「給付申請がそう簡単には認可されない」という形での、実質的な引き締め策も取られつつあるという。
これらの変化は、社会保障費の抑制による面もあるが、そのきっかけとなったのはやはりコミュニティケア改革といえるだろう。なぜなら同改革を境に、福祉関係予算を移管された地方自治体側にコスト意識が生まれたうえ、ケアマネージャーがクライアントの予算管理に責任を持つようになったからだ。
非営利団体の役割
今回イギリスを訪問して感じたのは、このような「民間企業参入・個人負担増加」という流れの中、ボランタリー・セクターの活動は、かえって重要性を増しているのではないか、ということである。なぜなら、市場原理や自己責任の導入が進めば進むほ