日本財団 図書館


一回目は、一九八○年十一月に低所得者への所得補助制度(Supplementary Benefits)の改正により、企業経営のナーシングホームにも給付が認められるようになったことによるものだ。その主な目的は社会的入院の削減だったが、結果として民間の老人ホームが急増した。

二回目は、「民間部門の活用」をその目標の一つとするコミュニティケア改革による変化である。コミュニティケア改革とは、九二年〜九三年に実施された在宅シフトや地方分権などを目的とする福祉の制度改革のことだが、その中で「地方自治体は『外部事業者からのサービス購入』と『自前のサービス供給<この場合、自治体は民間事業者と同じ条件で入札(tendering)に参加)>』を比較し、費用対効果の高い方を選択しなければならない」と定められた。さらに自治体には、「特別移行措置金(Special Transitional Grant)」という、民間シフト目的の補助金まで支給された。この結果、自治体の福祉部門が縮小・廃止されたり、公営施設が民営化されるケースが相次いだ。

こうした政策転換を経て、介護事業を営む民間企業が急増した(左図参照)。このようにイギリスの福祉は、過去十年間ほどの間に大きな変化を遂げたのである。

 

イギリスにおける老人ホーム入居先の構成比率(%)

055-1.gif

(老人ホーム入居者総数を100とした場合の、運営主体別の入居者構成比)

(資料)Healt and Personal Sociial Services Statistics for England

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION