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民間企業の進出が増加するイギリスの福祉サービス

ロンドンの郊外、ミドルセックス(Middlesex)地区の閑静な住宅街に位置するマナーコート・ナーシングホーム(Manor Court Nursing Home)。この施設は、ブーパ(BUPA)という民間企業によって経営されている。といっても、日本の有料老人ホームのように健康で資産もある老人を主対象とした豪華施設ではない。四棟のうち三棟は痴ほうや要介護の高齢者専用となっており、社会サービス(Social Service)やNHS(National Health Service:国営医療サービス)受給者、つまり経済的に恵まれない入居者が八割を占める。

イギリスでは、このように企業が経営する老人ホームは決して例外的な存在ではない。それどころか、老人ホーム全体の約六割が民間企業によって経営されている。

このブーパ(二三〇ケ所)をはじめ、ANS(五二ケ所)、ケアUK(二八ケ所)など、全国規模で老人ホームをチェーン展開する企業も多い。

さらに、伝統的に非営利団体や自治体のサービスが中心だった在宅介護の分野でも、最近では民間企業の活動が目立つようになってきた。現在では、全体の在宅介護サービス量の約一割が企業によって供給されている。

 

イギリスでの民活の経緯

こうした姿は、一般的な「高福祉国家・イギリス」のイメージとは少し違うものかもしれない。これは、イギリスの福祉が二回にわたる政策転換を経て、大きな変化を遂げたからである。

 

 

 

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