日本財団 図書館


ら、廊下に机を並べて食べている(笑)。寝たきり老人も食堂で食べたいと望めば、その通りにしています。これは、大規模施設における小規模化ともいえましょう。

施設はピカピカでなく、あばら屋であっても、被介護者をよく理解してくれる人が周りに一人でもいれば、当人は一番幸せなのではないかと思いました。介護する人が、老人を支えるとともに、老人から支えられている関係こそが介護の現場の最高の関係なのです。

 

行政への依存心が家庭から老人を排除する?

 

二〇〇〇年四月から介護保険がスタートしますが、現場を歩いてみて、介護保険についてどう思いますか?

地域によって介護サービスの選択肢に差が出てくることが問題です。ある地域では週に何回もサービスが受けられるのに、よそではそれができず、人里離れた施設へ行ってもらうということになります。これをクリアするため行政は施設を作ればいいという「箱ものづくりの発想」をしがちですね。

大規模施設の小回りが利かない介護が、介護保険のスタートによって固定するのではないかと気がかりです。介護保険は、介護の社会化を進める大事な一歩ですが、高齢者一人ひとりにとっても喜ばしいものになってほしいのです。

 

お上意識が残るわが国では、市民はつい行政に依存しがちです。

一人暮らしの老人が餓死したりすると「行政は何をしている」という声が上ります。これが介護老人を施設に押し付け、家庭から排除する論理につながりかねません。介護保険も、老人を家庭から追い出す逆効果を生じさせるのでは…。

北海道のある男性は、いっさい補助金をもらわず自力で高齢者アパートを造りました。知的障害者、

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION