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理されています。個人と個人が向き合っていません。介護される集団と職員が向かい合っているのです。サービスを提供する側は義務としてやっているわけですが、これでサービスを受ける方は本当に楽しいのでしょうか。

 

介護される人はサービスの「対象物」として疎外される?

そうです。五〇人をひとまとめに扱うようなところより、小規模の宅老所の方が、融通が利きます。私がルポしたある宅老所では一〇人の要介護老人を三人のヘルパーがお世話していましたが、一人一日二〇〇〇円から二五〇〇円で入浴サービスから昼食まで提供していました。ここでは、お世話する人とお世話を受ける人たちが共に過ごしながら、互いによく理解し合っていました。

人口六万一〇〇〇人の栃木県今市市に、宅老所が四カ所もあります。介護の経験がほとんどない主婦が、一カ所二〇ないし三〇人、合計一二〇人がボランティア登録し、各所に毎日一〇人くらいが介護に出ています。一〇〇億円も投じた施設よりも社会的コストが安く、しかもお年寄りをよみがえらせる何かがあるのです。

こういう現場を見ていると、今の介護や福祉の予算の組み方はおかしい。必ずしも介護には多くのお金はかからないはずです。地域のオンブズマンが、老人福祉施設のあり方とお金のかけ方をチェックすることも大切だと思います。

 

高齢者の意向を生かす施設が求められているわけですね。

大規模施設でもいい所もあります。北海道美瑛町の施設では、一室四人用となっており、ベッドを入居者の好きなように並べさせたところ、きちんと並べず部屋の四隅にベッドを置きました。そうすると中央にスペースが空き、井戸端会議ができるようになりました。食事も好きな所でするようにした

 

 

 

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