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近年、JR東日本等が「シルバーシート」の名称を「優先席」に変えて話題となったがこれもその一例が。それまでは高齢者のための席という印象が強かったが、JR東日本では名称と窓ガラスのシールデザインそして「乳幼児をお連れの方、妊娠している方…」と案内文を変えることで(文字は小さいが)、高齢者以外の妊婦や幼児を連れた人なども優先の対象であることを強調。座席数も五倍に増やしたという。「元気なお年寄りも多いのに、高齢者全体を特別扱いしているようなイメージもあった」と、同社では高齢者に対する配慮も付け加えるが、確かに「この席は高齢者仕様ですよ」と特定されるのは、若い人から見ればやさしさと思うかもしれないが、本人たちにとっては疎外感につながりかねない。でも、「みんながいっしょに使える席ですよ」ということなら、グンと抵抗は少なくなる。

また、自治体が高齢者向け事務を担当する部課名を変え始めたのも、こうした社会の価値観の変化を象徴するものかもしれない。

 

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シルバーシートから「優先席」に衣替え。こうした表示がなくともみなが譲り合えるようになるのが理想だが…。(写真提供:JR東日本)

 

一九九八年四月二六日付の日本経済新聞によれば、自治体が高齢者の呼称に配慮し始めたのは八○年代後半からで、とくに九三年に厚生省が「老人」という呼び方について再考察が必要という報告書をまとめたことで活発になった。

 

 

 

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