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ークを作るだけの社会福祉協議会の仕事に飽き足らず社協から社会福祉法人に転職した人物だが、社会福祉団体は「運営があっても経営がなかった」「コストマネジメントが不在だ」と自己批判する。

シンポジウムのパネリストとなったある社会福祉法人の理事長は「厚生省のいうことよりも利用者のいうことを聞く」と述べ、またある理事長は「社会福祉法人は利用者のためにある。民間企業よりサービスが良くないならば無くなればいい。そのためにもオンブズマン制度が必要」と壇上から語りかけた。彼らは五〇代後半で、もう若いとはいえないけれど、いずれも別の業界からの新規参入組。その点では「ディスコ」経営から乗り込んできた折口氏と同じく福祉ビッグバンをきっかけに古い福祉を改革しようとする起業家たちである。「福祉はベンチャービジネス」(三浦氏)になりつつある。

三浦氏によると福祉事業の主導権は第三の世代の手に移る。民間の社会福祉事業の担い手は福祉の夜明け前から使命感に燃えて、その基礎を作った第一の世代、その後の固まった国の福祉制度によって「行政からお客を回してもらってきた」(林さん)という第二の世代、今は規制緩和による福祉ビッグバンの中でサービス産業としての"福祉"を創造する第三の世代へと変わりつつある。

第三の世代は一握りの起業家たちだけではない。地味だけれども地域で自分の身の丈に合った形で在宅福祉にかかわる若者は着実に増えている。弱者救済とは違う普通の人々の暮らしを支える、これからの福祉におもしろさとやりがいを知った若者たちだ。たとえば東京の大田区福祉公社に登録している協力会員一八九〇人のうち二、三〇代は二九〇人だが、二〇代がじわじわ増え、子育て開始とともに現場を離れていく三〇代の会員の穴を埋める貴重な戦力になりつつある。その一人で八七歳の女性の世話をしている田丸美月さんは「お年寄りに教えられることばかり」だと目を輝かす。

 

要介護認定などには膨大な個人データの処理が必要なためパソコンを自在に使いこなす若い世代の手がなければ介護保険は機能しないだろう。介護保険が、本当に高齢者のためになるのかどうか?

それは第三の世代が市場原理に従いながらも質の高いサービスを提供できるかどうかにかかっている。

 

 

 

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