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一部の識者は「特別養護老人ホームは平成のうば捨て山」だと、手厳しい非難を突き付けるが、林さんは特別養護老人ホームなど高齢者施設に入居する人やその家族の苦情や意見を聞くため「利用者の権利を守る委員会」の設立を提案し、今年六月に発足させた。委員の顔ぶれは利用者・地域住民代表、民生委員、社会福祉士および学識経験者。手紙や電話で施設利用者から相談を受けたりするほか定期、不定期にサービス提供事業所を訪問して実態調査をし、利用者の権利が侵害されているときは、その改善を指示する。「サービスを提供する側が行うセルフチェックには限界がある」という批判があるものの、こうした試みは若い世代ならではの発想だろう。

 

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一五〇〇人の介護職を集めた福祉ワークショップで「古い介護」の問題点を指摘する林和美さん。

 

林さんは九月四日、大阪で開かれた日本生命財団高齢社会福祉ワークショップに報告者として出席したが、会場ではCS(カスタマーズ・サティスファクション=顧客の満足)などサービス産業の専門用語が飛び交い、利用者を優先する意識の芽生えが感じられた。三重県の上野市から参加した同市社会福祉協議会在宅介護支援センターふれあいセンター長の平井俊圭さん(三八歳)は「介護の質を保つためにはISO9000シリーズの規格を取りたい」と述べた。ISOとは品質管理および品質保証のための国際規格で、いわば福祉の質もグローバルスタンダードに引き上げて競争力を付けようという考え方。先駆的な高齢者施設はシルバーマークには目もくれず、ISO規格を取るための準備に取り組んでいる。

 

サービス産業としての福祉ベンチャービジネス

「ビックバン」こそチャンスと、全くの異業界から飛び込み、注目を浴びて

 

 

 

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