死者の中には一年近く発見されなかった三七歳の男性の例もあって、この後、それまでは高齢者だけの巡回訪問が、中年独居者にも行われるようになった。
避難所から仮設に移って、友だちづくりを心がけた人は、自治会に加わったり、イベントにも参加、ボランティアも受け入れるように努力しているが、その一切を放棄した人には、外からの働きかけはむずかしい。
自治会の役員を引き受けた男性は、「役員なんてボランティアみたいなもので、働いていると時間の捻出も並大抵でないし、いろいろな費用もかなりの持ち出しになる。それでもここで友だちをつくりたいと思って、自治会の運営に参加した」と本音を語る。
この仮設には震災の年(一九九五年)の夏に入居した八〇〇世帯が暮らしていた。現在は約三〇〇世帯になっている。そのうち半数はまだ恒久住宅への入居が決まっていない。
実は公営住宅への応募条件に年齢制限がある。五〇歳未満、収入二〇万以上は応募できない。住宅不安が中年をさらに追い詰める。
仮設に居座るという者も現れる。仮設を追い出されたら、ホームレスになるより仕方がないというのは事実で、先の上田医師も、公営住宅への切符を手にすると、患者の顔色が違ってくるという。仮設のほうがいいとか、寂しいとかいっても、明るい表情になるのは、いかに住宅問題が生活の根底かということだ。
大半の患者は確かにイキイキしてくる。三年たって、今も入居が決まらないのは、精神不安を駆り立てる。取り残される不安でさらに酒に溺れる。「孤独死」の現状は、高齢者だけでなく中年男性にも深刻だ。
社会、地域との接点をどう持ち続けるか?
孤独死に追いやる状況をなくすためには、やはり地域内での支え合いの活動が必要となる。