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JR三鷹駅から歩くこと約一〇分。東京都武蔵野市の閑静な住宅街の一角に、"ヘルシーランチレストラン"との看板を掲げる『えりか』はあった。その名の通り、営業は平日のランチタイムのみ。だが、取材に訪れた日は、すでに午後二時を回っているというのに、店内はまだ、談笑しながら昼食を取る女性グループでにぎわっていた。

「ご繁盛で何よりですね」。ひと仕事終え、コック姿で現れた山本さんにそう声をかけると、「おかげさまで、今日は六〇人も来てくださいましたから、もう、出す料理は何もない。毎日がこうなら苦労はないんですが、一日一〇人台という日もある。この商売の弱点はお客さんの来る来ないが読めないことですね」と穏やかな笑みを浮かべながら答える。そして、最後の客が立ち上がるのを見ると、「ありがとうございました」と大きな声をかけ、深々と腰をかがめた。

レストランのおやじ稼業もすっかり、板についたようだ。

 

 

 

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