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しかし、これらの処置を採る自治体に共通して欠けているのは、給食ボランティアの持つ「心の温かさ」への理解である。

「心の温かさ」を原動力とする活動は、これを育てるのに長い時間を要し、いったん解消されると容易にはよみがえらない。

これを、一時的な体制整備のために霧消させるのは、食事と共に配られる「心」を待つ高齢者に対する心ない仕打ちというほかない。

うまく新体制に引きつがれるよう工夫するのが、住民のための行政であろう。

 

2] NPOの認証を早くしよう

いよいよNPO法が本年一二月一日に施行される。認証は、申請があってから四ケ月以内にしなければならないが、施行時には、特別に六ケ月の猶予期間が設けられているから、申請を受けた経済企画庁または都道府県は、明年五月末日以前に申請されたものについては、すべて、明年九月末日までに認証、不認証の決定をすればよいことになる。

問題なのは、この猶予期間をフルに使って、五月末までの申請はすべて明年九月ぎりぎりに決めるという態度の都道府県が存在することである。そういう方針を決めていなくても、認証の事務体制が整わず、ずるずるとそうなってしまいそうな都道府県も見受けられる。

ところが、福祉関係のNPOの中には、認証を受けて法人となり、これで資格要件を整えて、介護保険法に定める指定事業者になろうという団体がある。それらの団体にとっては、NPOの認証が明年九月末では遅過ぎるのである。なぜなら、介護保険制度の発足を明後年四月に控え、多くの地方自治体は、明年七月ころにはサービス提供の体制を整えることを目標にして準備を進めているから、明年九月になって指定事業者の名乗りを上げたのでは、バスに乗り遅れるおそれが強いからである。

せっかくNPOとして介護保険の事業をしようという団体を、行政事務の遅れのためにはじめから対象の外に置くのは、社会的損失であろう。

認証に裁量の余地はほとんどない。NPO法の精神を理解すれば、一人の職員が一日で一団体の認証をするぐらいのスピードで、十分処理できるはずである。

それが住民のための行政であろう。

 

 

 

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