化が進み、親から財産を継承できない人が増え、親を介護しなければならないという義務感が薄れてきました。また若い人が「自分のことは自分でするから、親も自立してほしい」と考える「個の時代」を迎えていることもあると思います。
これまで福祉は国の「措置」でしたが、介護保険は、お年寄り自身とサービス提供事業者との「契約」という初めての関係になります。
従来の福祉には人と人との間の上下関係や情誼(じょうぎ)関係はありましたが、対等な関係が基礎になる契約の概念はなく、画期的なことです。これまでの福祉がどろどろした感じだったのに対し、介護保険はビジネスという感じがあります。ただ、どの程度ビジネス化するか疑問です。
本来の介護は労働集約的な仕事だから、手抜きでもしない限りもうからないでしょう。民間企業が参入するのは、もうかる部分、つまり福祉器具などの分野等であって、人のお世話をするという根幹部分には、放っておけばあまり入ってこないと思われます。根幹部分に民間企業が参入するように、国が補助金を出すことも必要でしょう。その場合、手抜きをしないように監視、評価し、ペナルティーを科す介護保険版オンブズマンを設けることが必要でしょう。
今はどんなテーマで老いと介護について研究をなさっているのですか?
在宅死の可能性です。医療の手助けがなくても人が家庭内で安らかな死を迎えるためにはどんな条件をそろえればいいのかについて、看取りの文化の視点から研究しようと思っています。