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近世までの日本では、病人、老人の介護は家族介護が基本でした。特に古代には、同居して介護するよう法律で義務付けられていました。その代わり、介護する人は税を減免されました。近親者がいない場合は、地縁の者(隣近所の者)が当たることになっていたのです。

明治時代になると、基本的には家族介護ですが、一方で国は病院などの施設も作り始めました。家族介護から施設介護への芽生えです。戦後になると一九六三年に老人福祉法が施行され、特別養護老人ホームなども登場してきます。

一方、一九六一年に国民皆保険がスタートすると、医療需要が高まる見通しとなったため、病院の建設ラッシュが起こりました。国は資金が不足していたため、民間病院の建設を促進し、病院に福祉の機能も持たせ、医療を必要としない人にも社会的入院を容認する形になってきます。

 

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一九七〇年には、人口に占める六五歳以上の高齢者の割合が七%を超え、痴呆症の問題が大きく取り上げられるようになりました。八○年代になると、国民医療費が将来膨大な金額に上ることが発表され、小さな政府をめざしていた政府は、これを抑えるために地域医療計画、つまり病院数や医師の人数を抑える方針を決めました。社会的入院も容認されなくなり介護は在宅中心にシフトしてきます。こうした流れの中で出てきた介護保険は、歴史的に見て出るべくして出てきたといえるでしょう。

介護の社会化が不可避だった背景には、核家族化の進展で家族が介護力不足になったこともあります。一方では国民のサラリーマン

 

 

 

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