従来の政治史、文化史、宗教史、経済史といった部分的な歴史だけでは生活全体がとらえられないため、生活を丸ごととらえたいと思い、社会史の手法に則って医療と介護の歴史を調べ始めたのです。
大学では二つの講座を持っています。一つは一般教養課程の歴史学で、現代医学の仕組みを、戦後五〇年の歴史を振り返りながら解説しています。もう一つは専門課程の医学概論の一環として、ターミナルケア(終末医療)、安楽死、がん告知など現代医学の課題について平安時代にまでさかのぼって、そのプロセスを講義しています。
残念ながら入学したての学生は医療についての問題意識がほとんどありません。高校時代に成績がよかったから医学部に入ったらどうかと勧められて、公立なら授業料も安いから-と入学する若者