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この点をさらに追っていくと、「本音を聞かせてほしい」(『あさひ苑』村長さん)という言葉につながる。

「本音を知ることでより具体的に話を進めることができる」(同)からだ。しかし、そこは日本人。なかなか本音を語るのもむずかしい。特に「男の人、殊に今の高齢者の世代は、人に弱みを見せたくない、恥をかきたくないという警戒心が非常に強いんです」と村長さんもため息をつく。何がしたくて何が嫌なのか、喜怒哀楽の感情表現だけでなく、自分の意思を「きちん」と、つまり大人の分別を持った上で口に出すことができるかどうか。この点も周囲の理解を得てうまく助けられるコツの重要なポイントなのである。

さらに村長さんいわく、聞く耳を持つこと。たとえば相談員の提案や意見もまずきちんと聞く。また、サービスを利用したら、その使い勝手や首尾などの情報を、苦情も含めて教えてもらえると大変助かるとのこと。果たしてその人に一番合ったサービスなのかどうか、本人の声はとても参考になるし、今後の改善にもつながるからである。

 

"助けられ上手"への道とは…

もちろん本人の自覚があっても、それを受け入れる環境がなければ話にならない。たとえば何らかの支援を受けて暮らしている高齢者の中には、「本音をいったら、ますますひどい扱いを受ける」と我慢している人もいるはずだ。社会福祉の研究者と老人ホーム施設長でつくる「高齢者処遇研究会」(代表・田中荘司氏)では、ホームヘルパーや施設職員約千人に虐待に対する調査を行い今春その分析結果をまとめた。施設介護、家族介護等におけるさまざまな虐待、あるいはそれに近い扱いがあるのもこうした各種の報告を見れば残念ながら事実である。家族、周囲の協力はもちろん得た上で、では、自分でできる"助けられ上手"への環境整備のポイントはなんだろう。

前述の東京都老人総合研究所の杉澤さんによれば、「日ごろから気安く相談できる相手を見つけておく」ことが一番だという。感情表現も本音を語るのも信頼関係あってこそのもの。すでに信頼関係が築かれていれば心のうちを語ることはむずかしくないし、さらに

 

 

 

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