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援にしても、家族だけではとても背負い切れないことは明白だ。身内介護の場合、その大変さから、中には「自分は絶対に人に迷惑をかけたくない」と周囲の支援に否定的になったり、あるいは自分の経験をもとに「やってもらって当たり前」と考えたり。しかしボランティア等で「他人」をお互い様とお世話した経験があれば、いずれ将来、自分も「他人様」のお世話を受けるときに自然に受け入れられるのではないか-。『はっぴいわん』のみなさんの自然な笑顔を見ながら、そう確信した。

ところで久保田さんによれば、助けられ上手のみなさんにさらに共通する点として「好奇心が旺盛」という点もあるという。いったい好奇心と助けられ上手とはどうつながるのだろう。高齢者の問題にさまざまな角度から取り組む東京都老人総合研究所の保健社会学部門主任研究員杉澤秀博さんに伺った。

「好奇心、とりわけ人に対する好奇心の旺盛な人は、どんな人とでもいやがらずに何らかのつながりを持つことができます。これが大切なのではないでしょうか」と杉澤さんは分析する。人に対する興味が深ければ、異なった考えや不思議と思える態度にも拒否反応はなくなるはず。それが度量の大きさにつながり、自然に相手を受け入れられる土壌をつくるのだろう。

 

自分の意志をどう相手に伝えるか

『はっぴいわん』では元気印の高齢者にお会いしたが、さらに要介護の状態になったときはどうか。介護者がサポートしやすい人とは…。東京都府中市にある『あさひ苑・在宅介護支援センター』の相談員、村長智さんを訪ねた。

「体が不自由になっても、その範囲で何かをはじめてみようという意欲を見せてくれるような人は職員の励みになる」と村長さん。「若い時からいろいろなことに頭を突っ込んでおいた方がいいですよ」とアドバイスをいただいた。ここでもやはり「好奇心」はポイントだ。全国の特別養護老人ホームを回りボランティアなどを通して多くの要介護の高齢者と接した経験を著書にまとめた本間郁子さんも同意見。「自分の能力の範囲でどうすれば楽しく過ごせるか、何ができるかを常に見つけようとする人はサポートしやすいですね」(本間さん)。前出の杉澤さんによればこの場合「やりたいこと、やってほしいことがはっきりと相手に見えるため、お世話しやすいし励みにもなるのだろう」とのこと。

 

 

 

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