事故が起きたら、ただちに社に報告させ社が処理をするという、同社の利用者向けの「しおり」には、1]ケアスタッフがお客様の持ち物を破損した、2]お客様の家に置いていたものがなくなった、3]ケアスタッフがお客様にけがをさせてしまった─場合は「誠意をもって対処いたします」と明記されている。トラブルは医療機関や損害保険会社と連絡を取って対処するが、「これまで大きな損害賠償になったケースは発生していない」という。
シルバービジネスの業界団体の一つである(社)シルバーサービス振興会は「優良」な業者に「シルバーマーク」を交付しているが、交付の条件の一つとして損害賠償のための保険加入と、事故が起きたときの補償を義務付けている。事故の状況については「多額の保険金を支払うような大事故の例はない」(広報研修事業部)という。今のところは、そうだとしても、介護保険がスタートしたらどうなるだろう?残念ながら消費者保護に詳しい識者は高齢者の介護サービスに伴う消費者被害が増えると予想する。それは高齢者介護サービスが、行政による「措置」から、事業者と個人が交わす売買契約になるからである。つまり「福祉」はお役所から"していただく"行政サービスではなく、高齢者一人ひとりが介護サービス事業者と契約して"買う"商品になる。このことが何をもたらすのか一般市民はまだほとんど理解していないし、福祉関係者も「どれだけ認識しているか心もとない」(木間さん)という。
「このままでは介護保険にかかわる消費者間題は激増します」。消費者概念なき介護保険制度の行方を案じる及川昭伍国民生活センター理事長は顔を曇らせ、ズバリこういった。及川さんのいうところに耳を傾けてみよう。
「措置制度が撤廃され、介護サービスの供給事業が民間に開放され、シルバービジネスがどんどんこの分野に入ってくること自体は良いことです」。なぜならば利用者は、現在のようにお役所のお仕着せのサービスを黙って受け入れるのではなく、さまざまなシルバービジネス、非営利団体や高齢者施設などいろいろな事業者を比較しながら、自分好みの会社や団体を選んで契約することができるようになるからである。ただ、それには「四つの消費者の権利が保証されることです」と及川さん。すなわち「商品の質や