日本財団 図書館


国民生活センターは一九九八年三月、調査報告書「ホームヘルプサービスと消費者問題」を発表した。これは在宅サービスの利用者と提供者であるヘルパーの双方を対象にホームヘルプ活動に伴う物品の破損の実態やケガの状況と、それらへの対応について実施したアンケート調査をまとめたものである。ここではヘルパーの回答から消費者被害の実態を紹介しよう。

お年寄りの世話をするために赴いた訪問先で「価格は高くないが、物が壊れたり、だめになったことがある」と答えたヘルパーは三二%、「高価な物が壊れたり、だめになったことがある」と答えたヘルパーは二%いた。この種の経験が「ない」と回答したヘルパーは回答者の四〇%にとどまっていた。さらに「高齢者がけがをしてしまったことがある」と答えたヘルパーは四%。「けがはしなかったが、体をぶつけたり、あざができたことがある」は二二%もいた。「高齢者がけがをしたり、体をぶつけたということはない」と、はっきり否定したヘルパーは約半数(五四%)だった。要するにヘルパーが一〇人いるとすればそのうち六人は仕事中に訪問先の家財を損壊したことがあり、また一〇人中の五人はお世話をすべき高齢者の体に何らかのアクシデントを加えてしまった経験があるという結果が明らかになったのである。

ではヘルパーは、これらの事故をどう処理したのか。「職場(家政婦の場合は紹介所)の上司や担当者に相談した」に「自分で処理し、後日職場に報告した」を加えても、およそ半数のヘルパーは職場に報告をしていなかった。物損事故をヘルパーや彼らが所属する団体はどのように処理しているのだろうか。物件が明らかな二五二ケースについて調べると、「弁償した」ケースは九四件(三七%)にとどまり、一五〇件(六〇%)は弁償していなかった。見逃せないのは「ヘルパー個人が弁償している」件数が多いこと。九四件中に五九件もあり、「職場が弁償」の三五件を上回っている。

けがをしたケース四八件のうち、状況が明らかな三九件について見ると、最も多いのが車イスで移動中もしくは乗り移るときのけがで、次いで排泄介助の時だ。外出時のけがでは、パーキンソン病の人が発作を起こして壁に激突、転倒して病院に運ばれ検査・治

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION