日本財団 図書館


連載 笑う門に福来たれ

 

 

周公 『江戸のこばなし』より No.6

 

ある日、弟子の小僧(こぞう)が、「ご自分はたっぷり昼寝をなさるのに、私が昼寝をすると、目の色変えておしかりなさるのはどういうわけです?」と、儒学者(じゅがくしゃ)先生に文句を言った。すると、先生が、「わしは、夢の中で周公にお目にかかって、色々とお教えを受けるために昼寝をしているのじゃ」と言い訳をした。

翌日、弟子の小僧が、またまた昼寝をしているので、先生が、「さてさて憎(にく)いやつ。あれほど昼寝はならぬと申しつけておいたではないか!」と怒り出すと、今度は、弟子の小僧が、「私も、周公さまにお目にかかりたくって昼寝をしておりました」と、言い逃(のが)れをした。「口巧者(くちごうしゃ)なやつめ!それが本当なら、周公は何とおっしゃったか言ってみろ」

「周公さまは、『夢の中で、一度も先生にお目にかかったことはない』と申しておられました」

(『笑顔はじめ』天明二年 一七八二年刊)

 

● 最近の職場では若手社員に反論されて口ごもる中間管理職も多いのだとか。「近頃の若い者は…」という言葉、いつの時代にも当てはまるようで…。

(*)周公は中国古代の周王朝の文王の第4番目の子で紀元前1060年頃の人。儒教の祖・孔子は周公を礼を整備した理想の成人と讃えている。(本著説明書きより)

● 江戸時代、町人の間で広く愛された「小咄(こばなし)」。短い話の中に人情や世相の機微を取り込みながら、おもしろおかしく結末を結ぶ。世の中ははるかに変われと、当時のこばなしは、時空を越えて現代の私たちにも粋な笑いやぺーソスを届けてくれる。山住昭文氏による著作から毎回連載でお届けする。

● 『江戸のこばなし』(定価1100円) 山住 昭文著

原作の味わいを残しながら、現代の読み手にもわかりやすく手を加えた軽妙な1冊。筑摩書房から好評発売中。

 

公的介護保険とふれあい社会づくり

 

さわやか福祉財団では、基本的な介護の役割として公的介護保険の市民の立場に立った定着を、そして日常の生活支援や心のサーポートはボランティアで、という理念のもとに、ふれあい社会づくりをすすめていきます。どうぞみなさまの「声」をお寄せください。

 

さあ、言おう

 

[ひとりごと No.37 堀田 力]

自立とは、自我の確立である。自我がどれだけ確立しているかは、他人の秘密がどれだけ守れるかで計れるだろう。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION