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地域を支える資金を税金という形で担う市民にも、市民活動を育てるという新たな役割への意識改革が求められている。

もとより社会システムとは、誰かに与えられるものではない。市民が自ら思索し、行動し、選択して築きあげるもの。高齢化社会への移行とともに「市民の手で地域を創る」ことが急務となってきた今、地域を支える活動を行う市民ボランティア団体に何を求め、どうはぐくみ、育てていくのか。その答えを出せるのはやはりそこに暮らす市民しかいないのだろう。

 

Column

堀田 力

田中康夫氏から、こともあろうにお金に関する疑惑という、思いもかけない危険球を投げられ、噂の出所を追ってもらううち、噂の土壌に、行政の助成金、補助金の使途に関する情報が十分に開示されていないという問題があることがわかってきた。

私はかねてから行政に対して、「ボランティアの支援に当たっては、金は出しても口を出さないことが大切」と言っている。税金の使途を適正なものにする責任があるという理由で、行政は、助成金等を出した事業の進め方についてボランティア団体を縛り過ぎ、そのため、自発的にやる喜びを失わせ、活動を停滞させてしまっているからである。その意味で、仮設住宅におけるふれあい活動に対する兵庫県の助成金は、理想的な形だと注目していた。

しかし、その使途について無責任な噂が生まれた。無責任な噂を防ぐ方法は、助成金等の使途について、市民の誰もが、帳簿等の情報を見られるようにすることであろう。さわやか福祉財団は、すべての収入、支出について、情報を開示している。

神戸市のように、かつて疑惑を受けたことに懲りて、直接的助成を止めるというのでは、後退である。小川泰子さんが言うように、「助成金等は市民の税金」なのだから、その使途を市民が監視する。そういう体制をとることにより、助成金等の使途の適正とボランティア活動の自発性の双方を確保する道が開かれるのだと思う。

 

 

 

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