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人だ。これまで兵庫県内六〇〇余りあった仮設住宅の九割以上を回っている。

行動範囲が広がれば、当然お金もかかる。懇意の会社から安く仕入れたケミカルシューズの売上金を唯一の資金源にして不足分は預金を切り崩してきたが、それも底を突いた今は、生活費を切り詰めるしかないという。

「助成金の申請時期をもっと柔軟にしたり、申請方法を簡便にするなど、多忙なボランティアが利用しやすい形態に改善し、情報が末端まで行き届くように配慮して欲しい」と中村さんは語る。助成金が欲しくないわけではない。ただ煩雑な手間に費やす時間もなく、申請の情報も断片的にしか得られないのだという。

また「どのような形の支援にしろ行政支援には公正な判断がなされるべきだが、あまり現場の実情とかけ離れているようでは困る」という金田さんの言葉には自らの資産を削ってまで活動を続けているという自負とともに、行政はもとより安易に公的資金に頼ろうとする姿勢には警鐘を鳴らす。

多くのボランティア団体にとって、活動資金捻出は大きなウェイトを占める。しかしそのために奔走すれば、日々の活動がおろそかになりかねない。また、多忙さを理由に自ら情報を獲得する努力を怠れば孤立化が深まるばかり。行政が積極的にPRせずに申請主義を押し通し、市民も行政からのアプローチをただ待っているだけでは、両者は永久に接点を持てない。両者が共に歩み寄る方策はいったいどのようにあればいいのだろうか。

 

市民にやさしい情報交流の推進を

神戸市中央区のボランティア活動を支える中央区ボランティアセンターには、ボランティアや市民から多様な要望が寄せられる。ボランティア・コーディネーターの垂井加寿恵さんは、行政支援として求めたいのは、お金ももちろんだがそのためにも情報へのニーズが高いと語る。行政から情報がスムーズに流れてこないことにもどかしさを感じる一方、寄せられた声がきちんと行政に届いているかどうか、きわめて不透明だという。

「行政機関は一種のサービス業のはず。いかに便利にわかりやすく市民にサービスを提供するかを考えるべきです。同時に市民も、何もかもを行政任せにせず、

 

 

 

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