-有松店並-
今のところ雨は止んでいる。お茶の礼を述べお菓子をポケットに国道へ出たものの、花屋のご主人はいつまでも見送ってくれる。時々振り返りながら颯爽と歩いたつもりだが、気がつくと腕を振らない競歩選手のような歩き方になっている。
「逢妻(あいづま)川」を通過する辺りで「名古屋まで25km」の表示、このままの変な歩き方でがんばる。「赤、名電」が左脇を大層な張り切り方で通り過ぎて行く。この赤という色、風景には溶け合わずとにかく妙にかんにさわる。見るもの聞くものそれぞれしゃくにさわりながら1時間半、やっとやっと桶狭間(公園)に着。今川義元ハンと織田信長ドノを瞬時に想いながらさらに20分で有松絞りの店並の旧街道に。雨はすでに強く、街の色はまさしく絞り染めのようにしぶく滲んでいた。