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表紙絵から

 

 

池田げんえい/1946年神奈川県生まれ日本児童出版家連盟、現代児童会会員。創作『鬼の会』同人。日本デザイナー学院講師。はり絵作家。

 

● 平成・東海道五拾三次

その41「鳴海」

 

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鳴海現景

 

-有松店並-

今のところ雨は止んでいる。お茶の礼を述べお菓子をポケットに国道へ出たものの、花屋のご主人はいつまでも見送ってくれる。時々振り返りながら颯爽と歩いたつもりだが、気がつくと腕を振らない競歩選手のような歩き方になっている。

「逢妻(あいづま)川」を通過する辺りで「名古屋まで25km」の表示、このままの変な歩き方でがんばる。「赤、名電」が左脇を大層な張り切り方で通り過ぎて行く。この赤という色、風景には溶け合わずとにかく妙にかんにさわる。見るもの聞くものそれぞれしゃくにさわりながら1時間半、やっとやっと桶狭間(公園)に着。今川義元ハンと織田信長ドノを瞬時に想いながらさらに20分で有松絞りの店並の旧街道に。雨はすでに強く、街の色はまさしく絞り染めのようにしぶく滲んでいた。

 

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有松絞りは、慶長年間から木綿地の絞り染めとして知られている。

 

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安藤広重絵「鳴海」

 

名物有松絞りの商家が連なる町並みである。道脇の店では、亭主と客が商談中。入口に掛かったのれんの菱形のマークは広重のヒロという文字をデザインしたものだとか。広重の遊び心が伺える。

 

 

 

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