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表紙絵から

 

 

池田げんえい/1946年神奈川県生まれ。日本児童出版家連盟、現代児童会会員。創作『鬼の会』同人。日本デザイナー学院講師。はり絵作家。

 

● 平成・東海道五拾三次

その40「池鯉鮒(ちりふ)(知立)」

 

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-馬小屋長屋-

岡崎城見物もそこそこにそのまま国道1号へ。煙のような雨の中、脇目もふらず只々歩く。たっぷり2時間以上。広々と畑が続き、雨と汗がゴチャ混ぜになった頃、グッタリと知立に突入した。「池鯉鮒」は馬市の図、ここで「駒場町」へと右折。花屋の入口で(後で冠婚葬祭業と知る)何となく尋ねると、中からご主人、行動派と見え先の寺を指さし、説明しながらボクの先を歩き出した。この馬頭(ばとう)観音寺を元に周りの原で比較的近年まで馬市があったとのこと、面白いのは市(イチ)の時代の馬小屋か現在、そのままにアパート風民家に変わっていた。ご主人は土地の名士らしく行き交う人に手をあげる、そして「ウチでお茶を飲んでいけ」という。頭の中はアッツイ番茶が…。あれッ、茶道の茶だ、菓子まで付いてる。ノドの渇きにボクは片手で一気にズルズルと飲んでしまった。

 

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昔、馬小屋。今は長屋風の民家となって当時の面影をしのぶ。

 

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安藤広重絵「池鯉鮒(ちりゅう)」

 

この地名は、近くの神社の大池に鯉や鮒が多くいたというのが語源とか。毎年陰暦4月から5月までの10日間、馬市がひらかれていた。その間池鯉鮒の宿は大にぎわい。ただ、広重がこの地を訪れたのは真夏だったため、この図は想像図だといわれている。

 

 

 

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