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中谷宇奈月町長は、日本一の特別養護老人ホームをつくることを公約に掲げて町長選挙に勝った。それが日本初の全館個室の特養ホームを生んだのである。光武市長が市長選に打って出たときの公約は、「老後の心配のない市をつくる」だった。

高齢者福祉の先進国、スウェーデンに四年間留学して同国の地方自治に詳しい斉藤弥生さんは次のように語る。

「スウェーデンでは自治体も競争原理にさらされています。どの自治体も市民の税金をどれだけ効率的に活用して福祉を向上させたかについて情報が公開され、比較可能な指標に整理されて報道されるため、他の自治体との差が一目瞭然。だから市民は自分が住む市町の福祉行政を他の市町と比べて判断し次の市長選挙に投票するのです」。自治体行政に競争原理が働き、その結果、スウェーデンは国全体の高齢者福祉が底上げしたというわけだ。

「福祉が票になる時代」(岡本教授)を先取りした市町村長は、ただいま一〇一人。全国の市町村長に占める比率はわずか三パーセントに過ぎない。だが、この数が二〇〇人になり、さらに三〇〇人へと増えて全国の市町村長の一割を占めるようになれば、「土建自治体から福祉自治体へ」と動きはじめたメガトレンドに、残りの市町村長も乗らざるを得ない。菅原事務局長は「三年計画で会員を三〇〇人にしたい」と顔を輝かす。

公的介護保険の実施まであと二年。この際、あなたが住む町の首長に、土建自治体派か福祉自治体派かと、問いただしてみよう。彼が「待ってました介護保険!」といってくれるかどうか。公的介護業保険を住民のためになるようにしつらえるのも、そうでなくするのも市長村長、その人である。

 

 

 

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