でもサービスを受ける本人とヘルパーさんの人間関係は緊張の中に成立します。家族介護なら本人はわがままを通せ、何でもいえる。それが心地いいんですよ。社会的介護は家族のやさしさや絆を強くするために存在すべきだと思います。老人虐待があるのは介護が大変だから、家族からやさしさを奪うから。介護を楽にして、家族のやさしさを取り戻すために社会的介護が必要なんです。
父は自分のベッドの横で家族が集まってケラケラ笑ってにぎやかにしているのが好きな人でしたから、ベッドサイドでよくみんなでケラケラ笑っていました。肝臓がんですから顔が黄色くなったんですが「おじいちゃんの顔はこんなおまんじゅうの色だ」とか、平気でそんなことをいったりもしました。枕元で家族が祝宴をしたりもしました。
自分で介護をやってみてどんなことを感じましたか?
身内の介護を他者に委ねるということの辛さを強く感じました。介護職を信頼はしているんですが、最高のヘルパーをよこしてほしい、うまくやってくれるだろうか、父の尊厳を傷つけるような扱いはしないか、乱暴な扱いはしないか。それが本心でした。一方で専門職が家族間の緩衝材的な役割を果たしてくれるということもわかりました。母なんかは、娘が二人いてもちっとも来ないとか、下の娘は来れば来るで介護の仕方が良くないと怒ってばっかりいるとか、ヘルパーさんに不満をいってストレスを解消していたようです。