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介護保険でケアミニマムからの脱皮を

そんな体験から介護保険制度の実施に向けて何が浮かび上がるでしょう?

一番大事なことはケアミニマム(介護の最低基準)をどこに決めるかということです。施設介護では三食の食事が保障され、生理的なリズムに合わせた排泄介助があり入浴も定期的にできるが、在宅介護ではそれがきっちりと決まっていません。介護保険を根付かせるためにはそこの条件を明確にすべきです。またチームケアでないと在宅介護は無理ということ。さらに家族も社会的介護として何をしてほしいのか、しっかりものをいうことが必要です。家族として親をどういう形で看取るか、ということをみんなが合意し、そのことを専門家の方たちに伝える。そうしていかなきゃいけない、と思いました。

 

介護保険に期待することは?

これからは、自分の生き方を自分で決めていかなければならない時代です。どういう介護を受けて、どこで死ぬかまでを、一応、自分で考えて、自分で自分の生き方を選択するということはとっても大事なことです。そういう意味では介護保険には選択できるだけのサービスの質と量をきっちり作ってほしい。洋服だって三着しかないところから選ぶというのではなく自分は黄色がいい、赤がいい、グリーンがいいといって選べればいいように、福祉も選択できるようにならなければなりません。裸でなくとにかくまとう物を保障するのがケアミニマムです。その上に緑があり、黄色があり、自分に合った色彩を、生活設計に入れ込んでいく、というのが介護保険だろうと思います。

私は一年二ケ月父の介護をしましたが、五年、一〇年と介護をしなければならない人もいます。だからこそ介護保険なども含めて社会的サービスによって家族介護を継続していく条件づくりが必要です。あなたのやっていることはとても素晴らしいことだと介護に自信を持ってもらう。社会的介護は、家族に介護をしていこうという意思を固めさせる役割を果たさなければならないのです。

 

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